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高い被膜形成性・持続性と滑らかな感触を兼ね備えた新規シリコーンエラストマーゲル

 

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イントロダクション

近年、シリコーン製品において分子内に多彩な架橋構造を有するクロスポリマーと呼ばれる製品群が、化粧品原料として登場しており、主にメーキャップ、スキンケアの分野で処方に広く使用されるようになってきている。今回は、これらクロスポリマー群の中より、より処方適合性を高めたドイツワッカーケミー社の新製品BELSIL® REG 1100を紹介する。

 

 

1. BELSIL® REG 1100

本品は主剤のシリコーンクロスポリマーを、低粘度のジメチコンで膨潤させたシリコーンエラストマーゲルである。従来よりシリコーンレジンは、その高い被膜形成能によりメーキャップ用途で幅広く用いられているが、シリコーンレジンの架橋密度を上げると、耐水性や色移り抑制効果が上がる反面、被膜が固く、塗布面の動きへの追随性が低くなる傾向があった。これらの問題を解決するために、ワッカーケミー社は既に揮発性のイソドデカンおよびシクロペンタシロキサンを溶媒とするエラストマーゲルBELSIL® RG 901)とBELSIL RG® 1002)を紹介している。これらはシリコーンレジン同士を鎖状のポリジメチルシロキサンで架橋することによりレジンに動作追随性を付与し、他のクロスポリマーにない皮膚への高い被膜形成性とその持続性が製品の特長となっている(図1)。

 本稿紹介のBELSIL® REG 1100は、従来の当社品の特長である高い持続性および動作追随性を保持しながら架橋構造を最適化することにより、より滑らかな感触を付与し処方適合性をさらに高めた新製品である。

     

 図1.BELSIL® RG 100による被膜の曲げ試験

(下地:PET FILM)

 

 

 

2.構造の特徴

シリコーンエラストマーの構造イメージを図2に示す。汎用シリコーンエラストマーゲルの構造はイメージ(右)に示すように、ジメチコンポリマー同士がビニル基とヒドロシリル基による付加反応によって架橋された構造となっている。これに対し左図のBELSIL® REG 1100は、ポリマー上の架橋部位にMQレジンユニットを持つジメチコンクロスポリマー構造を有している。これら分子内のMQレジン構造の働きにより、高い稼動追随性を示しながらも擦れなどに強く、顔料などの保持力ならびに撥水性に優れた被膜を形成することが可能となった。

 

      

 

 

 

 

 図2.シリコーンエラストマーの構造イメージ

上:BELSIL® REG 1100、下:汎用シリコーンエラストマー

六員環構造⇒MQレジン、鎖状 物質⇒シリコーン鎖、鎖間浮遊球状物質⇒溶媒成分 

 

 

3.溶媒への良好な分散性

スキンケア・サンケア処方において重要なファクターの一つである溶媒への分散性を評価した。溶媒系としてエステルオイルおよび界面活性剤、シリコーンオイル等を用いた。図3に50%混合溶液とした時の各溶媒との混合試験結果の写真を示す。本品は、3次元ネットワーク構造を持つことから、完全に溶解はしないが、いずれの溶媒との混合においても良好な分散安定性を示した。このことから本品が多様な溶媒を含む処方に対して良好な適合性を有することが示された。

 

 

 

 図3.溶媒類への相溶性・分散性評価

上段左から混合溶媒名:ミリスチン酸イソプロピル、サリチル酸エチルヘキシル、炭酸ジエチルヘキシル、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、下段左から:低粘度ジメチコン、オレイン酸デシル、プロピオン酸PPG-2ミリスチル、トリメチルシロキシフェニルジメチコン 

 

4.BELSIL® REG 1100の色移り抑制効果

次に本品が処方されたリップスティック1)の色移り抑制効果の評価結果を示す。エラストマーゲルとして、BELSIL® REG 1100の他に比較として当社のBELSIL® RG 90とBELSIL®  RG 100、さらに市販品のジメチコンクロスポリマー(溶媒シクロペンタシロキサン)を用いた。同様の処方で調製されたリップスティックを一定量紙に塗布した後、上にもう一枚の紙を載せてローラーで荷重し、最初に塗布した紙の色差を評価することで色移り抑制効果を評価した。図4に示す通り本品が処方されたリップスティックではいずれも市販品より高い色移り抑制効果を示し、中でもBELSIL® REG 1100は最も高い効果を示した。

  

図4.BELSIL® REG 1100による色移り抑制効果

 

5.BELSIL® REG 1100の感触評価

 次にO/W型リキッドファンデーション3)処方における市販品との感触比較試験結果を紹介する。パネル試験の結果、エラストマーゲル未配合処方との比較においては、未配合処方では「オイリー」、「べたつく」との評価が主であったのに対し、エラストマーゲルを処方に入れることで、感触が「さらさら」した、「滑らか」との評価が得られた。また、市販品と比較すると、市販品処方では「オイリー」や「べたつく」との評価が含まれたが、BELSIL® REG 1100を加えた処方では、全ての評価で「さらさら」「滑らか」であると評価され、それぞれの割合も市販品と比較して最も多い評価となった。 

図5.リキッドファンデーションのパネル評価結果

エラストマーゲル:(市販品1)アルキル変性ジメチコンクロスポリマー、(市販品2)ジメチコンクロスポリマー

 

おわりに

本報で紹介したBELSIL® REG 1100は被膜形成性の高いシリコーンクロスポリマーとして、メーキャップ処方において優れた色移り抑制効果および滑らかな感触を付与することに成功した。また本製品はその特異的な構造により、メーキャップ分野のみならず、スキンケアをはじめとする様々な分野において、新規な処方の開発に寄与できる原料と言える。

 

製品情報

 製品名:BELSIL® REG 1100

化粧品表示名称:ジメチコン、(ビニルジメチル/トリメチルシロキシケイ酸/ジメチコン)クロスポリマー

INCI名:Dimethicone, Vinyldimethyl/Trimethylsiloxysilicate/Dimethicone Crosspolymer

  

参考文献

 Cosmetic-Info掲載 <http://www.cosmetic-info.jp/form/search.php>

 1)リップスティック(Lipstic 32CC12)

 2)リキッドファンデーション SPF 10(Satin Liquid Foundation SPF 10, O/W-Emulsion)

 

 

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