この度、新たに開発したLUMISIL® LR 7600シリーズは、射出成形用に設計された高透明の液状シリコーンエラストマーです。その優れた透明性と成形性により、一般照明用途、光学用途、レンズ 用途などの成形品の短いサイクルタイムでの連続自動成形を可能とし、コスト削減効果が期待できる材料です。本稿では、LUMISIL® LR 7600シリーズの成形性の特徴、および成形時の注意点についてご紹介致します。 |
以下に液状シリコーンエラストマーの射出成形工程の詳細について説明致します。
(1) 計量装置にてA材とB材を1:1の混合比率となるよう、ポンプにて圧送する。
(2) 材料はスタティスティックミキサー、もしくは、ダイナミックミキサー内に圧送され、混合される。
(3) 材料は、射出成形機の計量シリンダー内へと移動する。
(4) A/B混合材料を計量し、金型内に射出する。
(5) 計量シリンダー内の温度や材料混合部の温度が40度を超えないよう、温度制御装置を使用する。
図1に液状シリコーンエラストマーの射出成形システム概要イメージ図を示します。
図1.液状シリコーンエラストマーの射出成形システム概要イメージ図 |
LUMISIL® LR 7600シリーズは光学用途向けに新たにラインナップされた透明性に非常に優れたシリコーンエラストマー材料です。またLUMISIL® LR 7600シリーズは射出成形に最適な材料であり、自動車照明用途、光学センサー、LED封止など、幅広い用途において高透明なシリコーンエラストマー製品の製造を可能にします。更に本製品の最大の特徴は、熱や紫外線に対し、非常に優れた耐久性を有している点です。
通常の液状シリコーンエラストマー製品はシリカを含有しています。シリカを配合することで、材料粘度がせん断速度に依存する性質、すなわち、せん断応力が大きくなるほど、材料粘度が低くなるという構造粘性を有しています。この特性により、成形品の形状が複雑であり、かつ、射出圧力が低い場合においても金型内に材料を容易に充填させることを可能としています。一方、LR 7600シリーズは、構造粘性特性を有さない為、流動性は通常の液状シリコーンエラストマー製品に比べ優れていることから、低い射出圧力での複雑な形状の製品の成形に適しています。(図2参照)
図2.材料粘度のせん断速度依存性(25℃) LUMISIL 7600/50 と LR 3003/50 との比較 |
汎用グレードであるLR 3003/50は、せん断速度の依存性(構造粘性)を示すのに対し、LUMISIL® LR 7600/50は、 せん断速度の依存性が小さく、構造粘性を有さない為、低い射出圧力においても優れた流動性を示します。 |
LUMISIL® LR 7600シリーズを使用する成形装置は、従来の液状シリコーンエラストマー材料と変わりありません。しかしながら、理想的な成形性を実現する上で、成形プロセスにおいて、異なる点があります。以下にその注意事項をまとめました。
(1) 現在、ご使用頂いている成形機が通常の液状シリコーンエラストマー用のもので、射出シリンダーにジャケットが付属されていて冷却可能な機構であり、スクリューや射出シリンダー内に逆流防止弁を有しているものであれば、既存設備そのままの状態でLUMISIL® LR 7600 シリーズを使用することが可能です。
(2) 低粘度材料に合わせたスクリュー速度と背圧の調整が必要です。また、スクリュー速度を速め、背圧を高くすることにより、原料の射出量を一定に保つことができ、成形の再現性を高めることが可能です。(4) LUMISIL® LR 7600シリーズの材料粘度は、従来の液状シリコーンエラストマー材料とは異なり、混練や計量過程において生じるせん断応力に対し、極僅かな変化しか示しません。
(5) 成形時の気泡混入のリスクを最小限にするためには、すべてのキャビティーが材料で完全に満たされた状態にし、キャビティー内の圧力を十分に高い状態に保持しなければなりません。
(6) キャビティー内の真空度を高めるため、真空ポンプを使用することを推奨致します。
表1にLUMISIL® LR 7600シリーズの製品ラインナップと各製品の代表物性値を示します。LUMISIL® LR 7600シリーズは4種類の製品がラインナップされています。硬さは50~80度の範囲で取り揃え、いずれも射出成形が可能です。
表1.LUMISIL® LR 7600シリーズの代表物性値 |
LUMSIL® LR 7600シリーズは、その優れた透明性と耐熱性の長所を生かし、照明技術分野において一般照明用途やレンズ部品、自動車用ヘッドライト、その他光学部品など、エネルギー効率とコストパフォーマンスに優れた製品開発を可能にする材料です。また、射出成形による大量生産とコスト削減に貢献し、今後の照明、および光学用途の製品開発の発展に寄与できる材料となることを確信致します。 写真1に高透明シリコーンゴムの応用例を示します。
写真1.高透明シリコーンゴムの応用例 自動車用ヘッドライト |
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