旭化成ワッカーシリコーン株式会社 > テクニカルライブラリー > 剥離フィルム・剥離紙用シリコーンDEHESIVE®SFXシリーズ

剥離フィルム・剥離紙用シリコーン DEHESIVE® SFX シリーズ

 

pdfdl.jpg

イントロダクション

 弊社独自の技術によって開発されたDEHESIVE® SFXシリーズは、特有の構造要因に基づく優れた性能のため、欧米で非常に高い評価を受け、販売量が飛躍的に伸びている。今回、日本で本格展開を開始する同シリーズについて、PSA(感圧性粘着剤:以下PSAと記載)ラベル製造工程での使用を例に取って紹介する。本シリーズは、特にコスト削減と優れた物性・加工性の両立を可能にする。

1.剥離フィルム・剥離紙

 剥離フィルム・剥離紙は、食品容器、シャンプーボトル、ヨーグルトなどのプラスチック容器の外側に使用されているPSAラベル向けや、絆創膏、粘着テープ、ラベル、付箋紙、電子材料向け(OCA:光学用透明粘着剤)の粘着剤の保護、クッキングシートなどの食品用途向け、更にはセラミックコンデンサーや合成皮革の製造工程で使用される工程フィルム・紙に使用されている。
剥離フィルム・剥離紙は各基材に塗工されたシリコーンからなる剥離層によりスムーズな剥離を可能にする。

sfxpic1.jpg

 

 

 

2.PSAラベルの構造、製造工程

 一般的なPSAラベルは、図1の通り、剥離層を持ったフィルム・紙の積層体と粘着剤と表面基材の積層体の2層で構成される。PSAラベルはPSAのラミネート工程を経て製造される。
 フィルムや紙の基材に液状シリコーン剥離剤を塗布・熱硬化させ、その上にPSAを塗布して、乾燥させた後に表面基材を貼り合せる。このように剥離フィルム・剥離紙、粘着剤、表面基材がラミネートされた後、巻き取られる(図2)。縦方向にカットされたPSAラベル原反の表面基材上に印刷が施され、個々のラベルの形にダイカット(打ち抜き)する。ダイカットされ、不要となった格子状のカスを巻き上げ、PSAラベルが完成する(図3)。

sfx1.gif

図1. PSAラベルの構造

 

 

 図2. PSAラベル原反の製造工程

 

 

図3. PSAラベルの製造工程

 

 

3.PSAラベル製造時の問題点

 シリコーン層は強固に基材に密着し、ラベルが剥がされた後にも基材上に残る。シリコーン層は粘着剤が基材に貼りつくのを防ぎ、粘着剤層を保護する。PSAラベルを製造する際に重要であるのが、製造工程内のカス上げと実使用時のラベル剥離の両作業において、スムーズな剥離を両立することである。これには各作業に最適な剥離力を調整することが重要である。しかしながら、これらの両立は容易ではなく、調整が大変難しい。その理由は、異なる剥離速度で行われるカス上げとラベル剥離では、粘着剤の粘弾性特性の影響を受け、剥離力が変わるためである。


 

4. 剥離力と剥離速度の関係

 剥離速度が低速の場合、粘着剤はチューインガムのように糸(フィラメント)を引く(図4)。一方で、剥離速度が高速の場合、粘着剤はガラスのように硬くなり、変形し辛くなる。このような粘着剤の性質が剥離力に影響する。
 例えば、小さな剥離速度では粘着剤が柔らかい状態であり、架橋密度の低い網目構造を持つシリコーン剥離層に対しては架橋点が少ない長鎖のシリコーンが粘着剤のフィラメントに追随しやすくフィラメントが動きやすいため、剥離が容易となる。一方で、密な網目構造(架橋密度が高い)をもつシリコーン剥離層では、フィラメントがシリコーンの架橋点で固定されることにより、架橋密度の低いシリコーン層に比べ剥離力がやや高くなる傾向がある。
 大きな剥離速度の場合では、粘着剤はガラスのように硬い状態となることで、低架橋密度の長鎖のシリコーンに追随し難くなり、剥離速度が大きくなるにつれて剥離力が高くなる。
 一方で、高架橋密度のシリコーン剥離層はシリコーン鎖のモビリティが小さいことから、高速剥離時の粘着剤の変形の影響を受けづらい。これにより、低速剥離時と高速剥離時の剥離力の差が小さく、剥離力が安定する傾向がみられる。
 そこで、剥離速度が変化しても安定した剥離力を得られる密な網目構造の形成を可能とする新しいシリコーンポリマーDEHESIVE® SFXシリーズを開発した。

 sfxpic6.jpg

図4. 粘着剤層ならびに剥離層のイメージ

 

 

5. DEHESIVE® SFXシリーズの特徴的なポリマー構造とその性能

 新たに開発されたDEHESIVE® SFXシリーズは、従来の直鎖状ポリマーからなるシリコーン剥離剤とは異なり、枝分かれした星状のポリマー構造を持つ。この星状ポリマーは汎用の分岐ポリマーと比べても分岐度が高く、三次元的な分子構造であることから、密な網目構造を形成させることが可能である。表1にDEHESIVE® SFXシリーズの物性や各製品の特徴を示す。
 各剥離速度における日東電工社製No.31Bテープの剥離力を図5に、TESA® 7475テープの剥離力を図6に示す。図5、6より、DEHESIVE® SFXシリーズは、直鎖状ポリマーや分岐状ポリマーである市販品Aと比較し、剥離速度の剥離力への依存性が低いことが分かる。
 加えて、新しい星状ポリマーは架橋可能な置換基を多く持つことから、従来のシリコーン剥離剤に比べて高い反応性を示し、硬化特性にも優位性を持つ。これにより、硬化時に使用する白金触媒の量を減らすことを可能とする。
 図7に白金触媒の添加量に対するシリコーン抽出量を示す。剥離フィルム・剥離紙から有機溶剤に抽出されたシリコーン量により硬化性を確認している。図7より星状ポリマーであるDEHESIVE® SFXシリーズは直鎖状ポリマーや一般的な分岐ポリマーに比べて白金触媒量が少ない条件でもシリコーン抽出量が低く、硬化性が良好であることが分かる。


 

図5. 各剥離速度における日東電工社製No. 31Bテープの剥離力

 

 

      

表1. DEHESIVE® 製品物性一覧

DEHESIVE®製品

粘度

[mPas]

Vi基含有量

[mol%]

高速硬化性 低移行性 低速剥離時の軽剥離性 高速剥離時の軽剥離性

剥離力速度低依存性

フィルム基材への被覆性 多孔質基材への被覆性 特徴
DEHESIVE® 910
(ビニル基末端直鎖構造) 
300  1.46  *  ***** **** **  ** ** **** 高速硬化、安定した剥離力を示す
DEHESIVE® SFX 380   400 1.64 **  *****  **** ***  *** ** ***** 高速硬化、多孔質基材への被覆性に優れる
DEHESIVE® SFX 280   220  2.7 ****  *****  ** **** **** *** **** 高速硬化、多孔質基材に対して剥離力速度依存性が低い
DEHESIVE® SFX 250   200  3.3 ***** *****  * ***** ***** *** *** 高速硬化性に最も優れ、剥離力速度依存性が非常に低い
DEHESIVE® SFX 195   190 2.2 ***  *****  *** *** *** *** ** 高速硬化、フィルム基材に対して剥離力速度依存性が低い
*の数が多い程、性能が良いことを示す。                                    (上記値は代表値であり、出荷規格ではありません。)

 

 

sfx4.gif    

  図6. 各剥離速度におけるTESA® 7475テープの剥離力                  

 

 

  図7. 白金触媒添加量に対するシリコーンの抽出量

 

 

 

 

6. DEHESIVE® シリーズのマルチコンポーネントシステム

 旭化成ワッカーシリコーンのマルチコンポーネントシステムでは、目的の性能に合わせてメインのビニルポリマー(DEHESIVE®)、架橋剤(CROSSLINKER)、触媒(CATALYST)の種類や添加量を自由に組み合わせることができる。また、剥離力コントロール剤(CRA®)、密着向上剤、ミスト防止剤、着色剤など種々の添加剤も複数のラインナップから選択でき、物性や作業性を最適化させることができる。


 

終わりに

 

 新しい星状構造をもつDEHESIVE® SFXシリーズは高速硬化性ならびに剥離力への剥離速度の依存性が低いという特徴から、PSAラベルのような高速装置での製造において、コスト競争力のある高品質な剥離層を提供できる理想的な原料として期待される。

 

 

 

各製品の詳細情報につきましては、「お問い合わせ一覧」より、お問い合わせください。

シリコーン活用辞典

banner_library.jpg

ipros_banner_1.jpg

旭化成グループ情報サイト