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剥離紙・剥離フィルム用シリコーン 無溶剤型 DEHESIVE®  シリーズ

 

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はじめに

 DEHESIVE®シリーズはフィルム、紙等の基材に塗工することにより、優れた軽剥離特性を付与することができる。また、剥離力コントロール剤CRA®の併用により、重剥離への調整も可能である。製品ラインナップはエマルジョン型、溶剤型、および無溶剤型の3形態からなり、マルチコンポーネントシステムのため、用途に合わせて自由に処方組みが可能である。本文では、無溶剤型DEHESIVE®について紹介する。
 剥離フィルム・剥離紙は、プラスチック容器の外側に使用されている感圧接着(PSA)ラベル向けや、絆創膏、粘着テープ、ラベル、付箋紙、電子材料向け(OCA:光学用透明粘着剤)の粘着剤の保護、更にはセラミックコンデンサーや合成皮革の製造工程などに使用されている。



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 1. 無溶剤型DEHESIVE® シリーズの特徴




 本品は無溶剤型である。ゆえに、揮発性有機化合物低含有、低毒性、および経済的なプロセスが可能であり、多くの用途にとって魅力的である。130 ~140 ℃条件下で高速硬化であり、良好な平滑性を示す。また、高速硬化架橋剤の使用により触媒量を抑えつつ、良好な密着性を示す。
 特徴としては以下の項目が挙げられる。

・人体への悪影響が少ない
・低エネルギーコスト
・硬化速度が速い
・剥離力コントロールが可能
・基材への良好な密着性
・インラインおよびオフラインプロセスに適用可能

適用可能基材
・各種紙(PEラミネート紙、PP加工紙等)
・各種フィルム(PET ,BOPP, HDPE, LDPE等)

 無溶剤型DEHESIVE®シリーズは、作業環境の向上、環境影響の低減、および輸出入に関する問題も少ないというメリットがある。作業者の健康と、環境への影響を最小限に抑えるだけでなく、溶剤回収のためのプロセスとその処理装置が不要である為、環境面、エネルギー面において優位性を持つ。
 製品の粘度は加工条件に合わせて選定することができ、中でも低粘度の製品は、高速加工アプリケーションに最適であり、それらの優れたレベリング特性は、低いコート重量で高い被覆率を実現し、安定した剥離値を提供する。また、CRA®(Control Release Additive:剥離力コントロール添加剤)を併用することで、剥離力をあらゆる種類のPSAに合わせて処方組みが可能である。
 AMA®(Anti Mist Additive:アンチミスト添加剤)は、高速塗工によって生じるシリコーンエアロゾルの発生を効果的に防止し、作業環境汚染を最小限に抑える。無溶剤型DEHESIVE®は、マルチロールアプリケーションシステムまたはオフセットグラビアシステムで使用することが望ましい。

 

2. 製品ラインナップの一例 (2020/5/18現在)

 
表1 無溶剤型DEHESIVE®製品
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 ロール間の転写性が良好な粘度である、100~500 mPa・s の製品を取り扱っている。基材材質、種類に応じて適当な粘度の製品を選択することが出来る。図1にDEHESIVE® SF 500の剥離プロファイルを一例として示す。

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図1  DEHESIVE® SF 500の剥離力プロファイル




3. 無溶剤型DEHESIVE®ガイド処方例

  剥離特性の異なる2製品、DEHESIVE® SF 500及びDEHESIVE® SFX 250と、架橋剤CROSSLINKER V 90との組み合わせを例に、剥離力プロファイルの比較データを図2、3に示す。

Formulation 1
低速で軽剥離であり、様々な接着剤で良好な剥離力安定性を示す。一般的に両面テープでの軽剥離コーティングに使用されている処方である。

100.0 部 DEHESIVE® SF 500
002.4 部 CROSSLINKER V 90
000.8 部 CATALYST OL

Formulation 2
剥離力の速度依存性が非常に小さく、高速硬化性、良好な流動性を示す。ポットライフが長く、最少の触媒量で使用できる処方である。

100.0 部 DEHESIVE® SFX 250
006.5 部 CROSSLINKER V 90
000.3 部 CATALYST OL


 
図2  剥離力プロファイル (評価テープ: tesa® A 7475)
 

図3  剥離力プロファイル (評価テープ: tesa® K 7476)
 

 無溶剤DEHESIVE®シリーズの中でもDEHESIVE® SFXシリーズは従来のポリマーとは異なり、特徴的なポリマー構造を有する。上記剥離プロファイルからもわかるように、剥離力の剥離力速度への依存性が低いことが特徴である。また、架橋可能な置換基を多く有することから高い反応性を示し、硬化特性にも優位性を持つ。これにより少ない白金量で、良好な硬化被膜を得ることを可能とする。
 図4に、145℃硬化条件下での、白金触媒添加量とシリコーン抽出量(Si抽出分)の関係を示す。Si抽出分は、硬化後の剥離紙・剥離フィルムから有機溶剤に抽出されたシリコーン量から導かれる値であり、硬化性の確認に用いられる。

図4  白金量に対する未硬化Si抽出量


 SFX シリーズについて別ページにまとめておりますので、そちらもご参照ください。
リンク >>> 剥離フィルム・剥離紙用シリコーン DEHESIVE® SFX シリーズ



 

4. DEHESIVE® シリーズのマルチコンポーネントシステム

  旭化成ワッカーシリコーンのマルチコンポーネントシステムでは、目的の性能に合わせてメインのビニルポリマー(DEHESIVE®)、架橋剤(CROSSLINKER)、触媒(CATALYST)の種類や添加量を自由に組み合わせることができる。また、剥離力コントロール剤(CRA®)、密着向上剤、ミスト防止剤(AMA®)、着色剤など種々の添加剤も複数のラインナップから選択でき、物性や作業性を最適化させることができる。


 

終わりに

 無溶剤型DEHESIVE® シリーズは、硬化性、密着性などの物性特性の要求に対してフレキシブルに対応可能であり、併せて作業者の健康と環境への影響を最小限に抑えることができ、環境・人・市場に対して高いパフォーマンスが期待される製品である。




 




  
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