ゴム部品は、その柔軟性、弾力性ゆえに、2つの硬い部品の間に挟まれて使用されます。その際に、ゴム部品に期待される役割のひとつは防振機能です。つまり、2つの部品の間に位置して、両者間の振動の伝達を抑制します。温度変化に強いシリコーンゴムは、自動車の防振部品のうち、耐熱性や耐寒性が求められるものに多く使用されています。Wacker Chemie AGのシリコーンゴムは既に、欧州車の防振部品には不可欠な存在となっています。
マフラーハンガー エグゾーストマウントとも呼ばれます。シャシーの下で排気管および触媒とマフラーを吊り下げる役目を担います。排気管には、エンジンからの排気ガスの振動が直に伝わります。排気管の振動を車体へ伝達しないようにするのが、マフラーハンガーの主要な機能です。さらに、走行時には排気管などの揺れを抑える働きもあります。エンジンに近い排気管部分では200℃近い高温になるため、シリコーンゴムの耐熱性が必要になります。
|
|
ダイナミックダンパー 共振現象を利用して、対象となる部品の振動を吸収する部品で、金属のおもりとゴムで構成されます。共振現象を起こさせるため、固有振動数の調整が必要となります。シリコーンゴムは‐40℃でも柔軟性を保ち、また、温度によるバネ定数の変化が小さいため、低温から高温まで幅広い温度領域で機能するダイナミックダンパーを実現できます。
|
|
エンジンマウント エンジンを支え、かつ、エンジンから車体への振動伝達を抑制する部品です。シリコーンゴムは、シリコーンの本質的な柔軟性のため、低動倍率とすることができ、振動伝達の抑制という点で、天然ゴムやEPDMより優れています。エンジンルーム内の温度は上昇傾向にあるため、温度による物性変化や劣化が小さいという点でも、エンジンマウントに適しています。
|
・シリコーンゴムは温度環境に拠らず、安定した性能を発揮する防振部品を実現します。
▶ シリコーンゴムは‐40℃という極寒の環境でも柔軟性を維持します。
▶ シリコーンゴムはEPDMに比較して、‐40℃から200℃までの広い温度範囲安定した動倍率と静バネ定数を示します。
▶ 150℃における機械的物性はEPDMと同等となります。(天然ゴムは150℃では短時間で劣化してしまうため、使用できません。)
▶ 優れた耐熱老化性により、高温における長期間の使用でも性能を維持します。
・高tanδと低動倍率という両極をカバーする製品ラインナップを取り揃えています。グレードのブレンドにより、所望の防振特性を有するシリコーンゴムを得ることができます。
・硬さに対する動倍率の依存性が小さく、バネ定数と動倍率の組み合わせに自由度があります。
図1. シリコーン粘着剤のステンレス材への粘着力
図2. シリコーンゴムの機械的特性の温度依存性(他材料との比較)
Wacker Chemie AG のミラブルシリコーンゴムは、機械特性に優れるため、防振部品の材料として好適です。防
振部品に必要な特性に応じて、異なるグレードをラインナップしております。
防振部品の特性 | 材料特性 | ELASTOSIL®シリコーンゴム 推奨グレード |
疲労耐久性 | 高引裂強さ | EL 4406, EL 4500, EL 4610 |
バランス | 中引裂強さ | R 401/40, R 401/50, R 401/60 |
振動伝達抑制 |
高反発弾性率 |
R 101/35, R 101/45, R 101/65, EL 8402, EL 8502, EL 8602 |
項目 |
単位 |
中引裂グレード*1) |
高引裂グレード*2)) |
||||
グレード | - |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
硬さ | - | 41 | 51 | 60 | 43 | 53 | 60 |
引張強さ | MPa | 10.9 | 12.0 | 11.6 | 11.4 | 12.6 | 12.7 |
伸び | % | 740 | 620 | 520 | 830 | 690 | 590 |
引裂強さ |
kN/m | 18 | 20 | 23 | 26 | 31 | 29 |
引裂強さ |
kN/m | 20 | 24 | 27 | 24 | 27 | 32 |
反発弾性(ショブ式) |
% | 62 | 63 | 65 | 65 | 59 | 63 |
動倍率4) | - | 1.72 | 1.80 | 1.67 | 1.80 | 1.97 | 1.85 |
tanδ4) | - | 0.12 | 0.11 | 0.10 | 0.11 | 0.12 | 0.11 |
圧縮永久ひずみ
(180℃22時間) |
% | 26 | 26 | 19 | 37 | 45 | 41 |
項目 |
単位 |
高反発グレード*1) |
低圧縮永久ひずみグレード*3) |
||||
グレード | - |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
ELASTOSIL® |
硬さ | - | 36 | 46 | 65 | 43 | 53 | 62 |
引張強さ | MPa | 8.7 | 9.4 | 8.5 | 9.0 | 9.5 | 10.6 |
伸び | % | 710 | 570 | 200 | 440 | 360 | 360 |
引裂強さ |
kN/m | 11 | 13 | 9 | 9 | 9 | 12 |
引裂強さ |
kN/m | 22 | 21 | 22 | 27 | 30 | 26 |
反発弾性(ショブ式) |
% | 70 | 69 | 75 | 77 | 70 | 60 |
動倍率4) | - | 1.43 | 1.44 | 1.36 | 1.23 | 1.44 | 1.70 |
tanδ4) | - | 0.07 | 0.07 | 0.08 | 0.06 | 0.09 | 0.11 |
圧縮永久ひずみ
(180℃22時間) |
% | 10 | 11 | 8 | 15 | 13 | 12 |
(上記値は代表値であり、出荷規格ではありません。) |
製品名 | 硬化剤成分 | 含有量 | 標準一次硬化条件 | 標準二次硬化条件 | 消防上法の区分 |
DS-3 | ジクミルパーオキサイド | 40% | 170℃ 10分 | 200℃ 4時間 | 非危険物 |
DS-8 | 2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン | 50% | 170℃ 10分 | 200℃ 4時間 | 指定可燃物
可燃性固体類 |
【加工方法】
・二本ロールまたはニーダーにより、ミラブルシリコーンゴムコンパウンドを柔らかくなるまで練ります(可塑化)。
摩擦熱により、材料温度が40℃以上に上昇する際は、ロールやニーダーを結露しない程度に水冷します。
・硬化剤ペースト、顔料ペーストやその他の添加剤を添加し、均一になるまで混合します。
・所定の温度に加熱した金型のキャビティに材料を充填し加熱すると、硬化反応が進行し、シリコーンゴム成形品
となります(一次硬化)。
・強制循環式オーブン内にてシリコーンゴム成形品を加熱処理します(二次硬化)。
【保管上の注意】
・直射日光、雨水の当たらない冷暗所(40℃以下)に保管して下さい。
【安全性について】
・包括的な安全情報については、製品データシート(SDS)をご参照ください。
【消防法】
・指定可燃物 合成樹脂類