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ターボチャージャーホース用シリコーンゴム
シリコーンゴム 製品情報

ミラブルシリコーンゴムコンパウンド


 自動車の開発において燃費向上は常に課題とされてきました。エンジンの燃費を限界まで向上させる方策の1つとしてターボチャージャーがあります。1980年代には、スポーツカーなどで高出力を生み出すために搭載されたターボチャージャーですが、現代においては、排気量のダウンサイジングとの組み合わせにより、エンジンの低燃費化を実現しています。ターボチャージャーホースには高温の空気通過に伴う絶え間ない圧力振動が発生するため、耐熱性、耐圧性、伸縮性に優れた材料で作られなければなりません。この要求を満たすため、Wacker Chemie AGのシリコーンゴムが欧州車向けの高性能ターボチャージャーホースに使用されています。

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 写真1. ターボチャージャーホースの例
    
  図1. ターボチャージャーの構造

 

シリコーンゴムの優位性
 シリコーンゴムは優れた耐熱老化性、および、低圧縮永久ひずみ特性により、高温における長期間の使用後でもターボチャージャーホースの性能を維持します。

           表1. ターボチャージャーホースに使用されるゴムの種類と使用温度の関係

使用温度

 ゴムの種類

略号

-35℃ ~ 160℃

 エチレンアクリレートゴム

AEM

-35℃ ~ 185℃

アクリルゴム

HT-ACM

-40℃ ~ 220℃

フルオロシリコーン/シリコーンゴム

FVMQ/VMQ

-40℃ ~ 240℃

フッ素ゴム/シリコーンゴム

FKM/VMQ

                            

シリコーンゴム製ターボチャージャーホース
 シリコーンゴム製のターボチャージャーホースは、過酷な条件に耐えるために複合材料による層状構造となっています。図2に代表的なターボチャージャーホースの構造を示します。ターボチャージャーホースの内側より、フッ素ゴムのインナー、シリコーンゴム内層、補強糸、シリコーンゴム外層で構成されています。
 各層はそれぞれ重要な機能を持っています。フッ素ゴムのインナーは、シリコーンゴム層をディーゼルオイル成分などから保護します。補強糸は、連続的な圧力振動に対して耐久性を向上させます。そして、それらが組み合わさることで、優れた耐熱性、耐久性、耐油性、伸縮性を持つ、シリコーンゴム製のターボチャージャーホースが完成します。
 押出成形の場合は、フッ素ゴムのインナーを芯金の上に成形し、さらに内層のシリコーンゴムを押出成形します。次に、補強糸を織り上げた後、外層のシリコーンゴムを押出成形します。所定の長さに裁断して、一次硬化に供します。
 シリコーンゴムの内外層と補強糸を押出機により形成するのではなく、トッピングシートにより、代替することもできます。トッピングシートを3重から5重に巻きつけて、ホースを形成します。押出成形とトッピングシートにはそれぞれ長所と短所があります(表2)。


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 図2. シリコーンゴム製ターボチャージャーホースの構造の例

 

表2. シリコーンゴム製ターボチャージャーホースの製造方法の比較

方法

 押出成形

トッピングシート

長所

生産性が高い

デザインの自由度が高い
(複雑な曲管、枝分かれ管が可能)

短所

コンパウンドが柔らかいと加工しにくい
(寸法が不安定、挿入時に変形)

人手がかかる

 構造  4層  複数(3層以上)
 ホースの径  80mmまで  60mm ~ 180mm

耐圧性

2.5気圧

5気圧

連続使用温度/最高温度

210℃/225℃

240℃/260℃*

*高耐熱老化性シリコーンゴムコンパウンドELASTOSIL®R 756/60を使用した場合


 成型用コンパウンドの調製方法
 ・二本ロールまたはニーダーにより、ミラブルシリコーンゴムコンパウンドを柔らかくなるまで練ります(可塑化)。摩擦熱により、材料温度が40℃以上に上昇した際は、ロールやニーダーを結露しない程度に水冷します。
・硬化剤ペースト、顔料ペーストやその他の添加剤を添加し、均一になるまで混合します。

 Wacker Chemie AGのシリコーンゴムコンパウンドの特長
» 高グリーン強度により、押出成型後、マンドレル挿入時にも有機系ゴムのような高い作業性を発揮します。
» ダイスウェルが小さく押出時の寸法安定性に優れます。
» フッ素ゴムや補強糸との密着が可能です。
» 高耐熱老化グレードでは、250℃以上の高温に長時間耐えます。


押出成形用シリコーンゴムの材料物性

可塑度が高く、押出成形に適したグレードです。要求されるターボチャージャーホースの特性に応じて、異なるグ
レードをラインナップしております。


 

単位

ELASTOSIL®
EL 4507

ELASTOSIL®
R 411/60 M 
ELASTOSIL®
R 760/70 
ELASTOSIL®
EL 7805 
可塑度 -  250  330 380 390
硬さ Shore A - 50 61 70 79

引張強さ

MPa

11.0 9.8 10.5 10.4

伸び

%

700

710 480 280

引裂強さ(クレセント形)

kN/m

25 32 24 14
圧縮永久ひずみ
(180°C 22時間)
%  26 40 12 11
ターボチャージャー
ホースの要求特性
 - 柔軟性  寸法精度
疲労耐久性
寸法精度  耐負圧性 

硬化剤

-

DS-8/1.2部

 DS-8/1.2部 DS-3/1.8 部  DS-8/1.2部 
                                                                      (上記値は代表値であり、出荷規格ではありません。)
測定条件:JIS K 6249、硬化条件:一次硬化 170℃10分、二次硬化 200℃4時間



トッピングシート用シリコーンゴムの材料物性

コンパウンドが柔軟で粘着性があるため、トッピングシートによる製造により適したグレードです。


 

単位

ELASTOSIL®
R 401/60

ELASTOSIL®
R 756/60
可塑度 - 230 240
硬さ Shore A - 59 60

引張強さ

MPa

11.9 11.2

伸び

%

510

520

引裂強さ(クレセント形)

kN/m

21 19
圧縮永久ひずみ
(180°C 22時間)
% 19 20
ターボチャージャー
ホースの要求特性
 - 汎用 高使用温度

硬化剤

-

DS-3/1.5 部

DS-8/1.0 部
                                                  (上記値は代表値であり、出荷規格ではありません。)
測定条件:JIS K 6249、硬化条件:一次硬化 170℃10分、二次硬化 200℃4時間


 

硬化剤ペースト

 

 製品名

硬化剤成分

含有量

標準一次硬化条件 標準二次硬化条件 消防上法の区分
DS-3 ジクミルパーオキサイド  250  330 380 390
DS-8 2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチル
パーオキシ)ヘキサン
50 61 70 79
・DS-3とDS-8は同等の物性を与えます。
・硬化剤の添加量を増やすと硬化速度は高まります。添加量は一次硬化の条件に合わせて、1~2部の範囲で調整することを推奨します。
・酸素の存在下では、過酸化物による硬化が阻害されます。一次硬化時には、スチーム窯内の酸素を完全に除去するように注意してください。

 


  
高耐熱老化グレードの性能

シリコーンゴムの中でも特に耐熱老化性に優れるELASTOSIL®R 756/60 は、耐熱向上剤を添加することにより、優れた耐熱老化性を示します。

 

 

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図3. ELASTOSIL®R 756/60 の耐熱老化性 a) 硬さ変化、b) 引張強さ、c) 伸び
*耐熱向上剤 Black119 1部+Brown 105 A 1部、**耐熱向上剤 Stabilizer H3 1.5部+White 101 1部


【保管上の注意】
・直射日光、雨水の当たらない冷暗所(40℃以下)に保管して下さい。

【安全性について】
・包括的な安全情報については、製品データシート(SDS)をご参照ください。

【消防法】
・指定可燃物(合成樹脂類)

 

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