1. 主要ページへ移動
  2. メニューへ移動
  3. ページ下へ移動

ブログ

記事公開日

「市場と特許を同時に考える」― 五十嵐さんに聞く、技術開発の視点と面白さ

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 ヘアケア市場に向けたシリコーンエマルジョン技術の開発や、数多くの特許創出に携わってきた五十嵐憲二さん(Head of BT C&H JP)。今回は、五十嵐さんのチームによるヘアケア関連特許が成立したことを受け、その背景にある技術的な工夫や市場視点、特許創出に対する考え方についてお話を伺いました。

日本と海外市場の違いから生まれた発明

 日本のヘアケア市場では、コンディショナーやトリートメントといった「高付加価値・高感触」製品が主流となっています。一方、東南アジアなどの市場では、シャンプー用途でのシリコーンエマルジョンが依然として重要な役割を果たしています。今回の発明は、そうした海外市場ニーズを背景に生まれました。「日本で使われている一般的なエマルジョンを、もう少し経済的に作れないか、と考えたのがきっかけです。」両末端にOH基を有するシリコーンを用い、重合度や粘度を適切に抑えることで、経済性と感触のバランスを両立。さらに、ノニオン乳化を採用することで、シャンプー・コンディショナーの両方に使用できる「使い勝手のよさ」を実現しました。

技術的ポイント:あえて王道を外す発想

 従来、一般的だったアニオン乳化重合では、コンディショナー用途への展開に制限がありました。また、粘度が約5万mPa・sクラスのジメチコノールエマルジョンについては、意外にも特許が少ない領域である点にも着目。「技術的に“ここは押さえておく価値がある”と判断しました。」

ヘアケア分野の特許出願の面白さ

 ヘアケア分野の特許出願の面白さは、トレンドの移り変わりの速さにあります。成分や処方そのものは一見すると既存技術に見えても、市場のトレンドに合わせて切り口を変えることで、新しい特許として成立させることができる点が、この分野ならではの魅力です。「同じ技術でも、見方を少し変えるだけで特許になることがある」五十嵐さんはそうした点を、この分野の大きな可能性として捉えています。また、市場構造の違いも特許戦略に大きく影響します。

 海外市場では、P&Gさんやロレアルさんといったグローバル大手プレーヤーが市場の多くを占めているのに対し、日本市場では、小~中規模のプレーヤーが全体の半分以上を占めるという特徴があります。こうした日本市場では、①明確に定義された顧客層、②大手にはない独自のコンセプト、③細かな使用感・趣向へのこだわり、といった要素が重視されやすく、ユニークなアイデアが形になりやすい環境があります。

 「日本特有の顧客ニーズをうまく捉えられれば、特許としても“価値のあるデザイン設計”ができる」トレンドを読み解き、その時々の市場背景を踏まえて技術を再構成する。ヘアケア分野の特許出願は、技術と市場を同時に考える面白さが詰まった領域だと言えます。

知財部門に期待すること

 技術者の立場から、知財部門に対して特に期待しているのは次の点です。

  • 他社特許の有効性・弱点の見極め
  • 間接侵害や製造方法特許など、判断が難しい領域のアドバイス
  • 「一見すると強そうだが、実は成立要件が弱い」特許の見通し提供

 「“これは大丈夫ですよ”と言ってもらえるだけで、研究はすごく前に進みます。」単なる手続きサポートではなく、技術判断に踏み込んだ知財の伴走に、大きな価値を感じているそうです。

五十嵐さんからのメッセージ


 「思いついたら、それはもう発明です。迷わず取り組んだほうがいい」

 過去には、「これは発明にならない」と見送ったテーマが、後に大きなビジネス価値を生んだ経験もあったといいます。「あのとき出しておけば…と思う特許が、正直あります。だからこそ、小さな違和感や工夫も、発明として向き合うことが大切。その姿勢こそが、技術者としての成長につながると語ってくださいました。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加