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記事公開日

「科学における女性と女児の国際デー」に寄せて

 2月11日は「科学における女性と女児の国際デー」(International Day of Women and Girls in Science) 。

 この国際デーは、2015年の国連総会において設定されました。女性や女児が科学技術分野において重要な役割を果たしていることを再認識し、さらに活躍できる機会を強化することを目指しています。健康増進から気候変動への対応まで、持続可能な開発に立ちはだかる大きな課題を解決するには、ジェンダーに関係なくあらゆる才能を総動員する必要があります。

 旭化成ワッカーシリコーン株式会社つくば事業所の技術部に所属をする堀容子さんに技術者として働くことについてお話を聞きました。堀さんは2008年に新卒で旭化成ワッカーシリコーン株式会社(以下、AWS)に入社し、現在2人のお子さんの育児を行いながら技術者、そしてマネージャーとして働いています。


  • 現在の仕事内容について

 主に製品開発、そして技術グループのマネージャーとしてグループのマネジメントを行っています。技術の面からお客様のサポートを行うこともあります。また、マネージャーとしては他部署との調整、製造や品質管理などのサポートも行います。
 
 私が所属する部署であるビジネスチームパフォーマンスソリューションズ(BT S-P)は工業用途の添加剤を開発・販売しています。例えば、回収されたプラスチックごみを洗浄する際に発生する泡を消す消泡剤、段ボールのリサイクル工程で高熱のローラーから素材を剥がすための紙粉防止剤、ダイキャストからの取り出しをスムーズにする離型剤、カーポリッシュや撥水剤、建築用撥水剤、耐熱塗料、半導体向けシランなどが挙げられます。

 

  • 理系を選んだ理由

 もともと何事にも疑問を持ち、なぜそうなるのか知りたい、探求心が強いタイプでした。化学を学べば理由がわかると思いました。問題を解くのも大好きでした。油汚れを落とすにはどうすればよいかなど、生活していく上で必要な知識を身に付けることができました。

 

  • 学生や就活時に男女差などを感じたことはありますか?

 学生時代は確かに女性の学生数は少ないと感じていました。工学や電子系は更に少なかったと思います。理系は華やかさが足りなかったり、実験が多いので話をしたりコミュニケーションをとる時間が少ないため、女性自身が選ばないといった点も挙げられると思います。私は男女関係なくできる仕事だと思っていますが、就活時には女性の技術者はいませんと言われたことはあります。

 

  • AWSを選んだ理由

 学生時代に有機ケイ素化学を学んでいたため、シリコーン製造に携わることを希望していました。入社前に懇親会があり、とても雰囲気が良く、男女関係なくコミュニケーションが取りやすいと感じました。

 

  • 入社当時と現在のAWSは変わりましたか?

 大きく変わったと思います。産休育休のサポート体制もしっかりしていますし、フレックスや在宅勤務もできます。そして休暇も取りやすいと思います。なので、急に子供が体調を崩して迎えに行かなければいけない時も在宅に切り替えたり、フレックスなので自分の生活に合せた仕事ができていると思います。もちろん仲間のサポートもあって成立することです。

 

    • 現在の仕事について、一番楽しいと感じるとき

 技術者としてお客様の要求事項やご相談内容に対して提案をするなど、お客様とのコミュニケーションを通じて開発のヒントをもらうことができます。つくば事業所にはワッカーがグローバルに展開するワッカーアカデミー(トレーニングセンター)があります。私はトレーナーとしての資格も所有しているので、お客様に製品の特徴などをお伝えすることもあります。実はシリコーンはあまり知られていないので、シリコーンを知ってもらう機会を得ることは非常にありがたいです。セミナーを受けているお客様が驚いた顔をしているときは内心「やった」と思っています(笑)


  • 理系は男性優位の分野と言われていますが、仕事をしていて何か困難に直面したことはありますか?またその困難をどのように乗り越えましたか?

 女性は産休・育休を取ると1年から2年半業務から離れる必要があり、キャリアに穴が空いてしまったと感じました。もっと仕事をしたいけれど頑張れない、遅れをとったと感じました。技術は1年や2年の間にそこまでの進歩はありません。ただ、会社は変化が早いので、復帰後は追い付くのが大変でした。しかし子供は育てなければいけないので、ある意味あきらめがつきます(笑)。限られた時間内にどれだけ仕事を進められるか、プライオリティの明確化を行っていく中で、効率的に働くことができるようになりました。また、マネージャーを務めていると、チームメンバーの育成は子育てと重なる部分が多いと感じています。マイナス点にばかりフォーカスするのではなく、ポジティブな考え方に変換することが大切だと思います。

 

  • 理系はそもそも男性優位の分野だと思いますか?

 女性の進出が極めて少ない業界では男性優位である状況は少なからずあると思います。しかし、先ほどもお話ししましたが、ワッカーで働いている中では男性優位と感じることはありません。社内にも女性技術者は多くいますし、産休・育休からの復帰後も男性社員からのサポートのおかげで仕事と子育てを両立できていると思います。本社のあるドイツでは実は女性の技術者の方が多かったりもします。ただ、ドイツは開発するメンバーと実験するメンバーが明確に分かれているので、開発を担当する女性メンバーはまだ少ないかもしれません。

 

  • マネージャーとして

 プレイイングマネージャーなので、積極的にお客様への対応を行うことが出来ます。ただ、メインはチームのマネジメントなので、チームメンバーをサポートしたり、他部署との調整を行うことが多いです。実際開発の機会も少なくなりました。また、同じチーム内でも各自担当が異なります。そのため、私は自分の担当分野以外のケアを行う必要があり、難しいこともありますが、シリコーンの多様性を知る機会となっています。マネージャーとしてはチームメンバーが開発した製品が高い評価を得たり、成長している姿を見るととても嬉しくなります。本当に母の気分です(笑)。でも技術者として開発にも自ら積極的に携わりたいなとは思っています。

 

  • あなたとワッカーでのあなたの仕事が、科学界全体にどのように貢献していると感じますか?

 私が扱う製品は工業の分野で、あまり表に出ることはありません。しかし、私たちの生活にはなくてはならないものです。お客様の抱えている問題を一つずつ解決することで、技術革新に繋がっていると思っています。

 また、ワッカーはドイツの会社なので、ヨーロッパ向けの製品が多いです。仕様が異なるため、もちろん日本のお客様からの要求とは異なります。その製品が持つ特性を別の視点から見ることで、日本独自の用途で展開することができます。製品の用途の幅を広げることができます。例えばSILRES®710という製品はヨーロッパにおいては落書き防止剤として使用されています。落書き被害が非常に多いからです。日本ではあまり落書きを見かけないので、需要はないかもしれません。この製品の特性は簡単に落とせることです。つまり、この製品を使えば消すことが出来るので同じところに何度も描くことができるのです。アーティストや子供に壁を開放して大きなスペースに好きに描く体験を与えることができるかもしれません。発想の転換で、製品の特性を最大限活かすことができます。

 


  • 今後の目標をお願いします

 現在はお客様のニーズに基づいて製品を開発する、いわゆる「マーケットイン」が大半を占めています。自分たちの技術を自ら発信し、お客様に提案する「プロダクトアウト」を強化していきたいです。受け身ではなく攻めの姿勢ですね。売り上げのためにやらなければいけないことですが、今後の技術の発展や会社の売り上げに寄与できるような製品を開発したいと思っています。



  堀さんはいつもテキパキ淡々と仕事をこなしているイメージ。身長147cmの私と唯一視線の高さが同じ堀さん。インタビューを通して、堀さんはどんな困難も様々な視点で考え、ポジティブに変換し力強く進むことができる女性だと思いました。確かに理系は女性が少なく、実験場は暗くて静かな印象ではありますが、女性が過ごしやすい環境を整えたり、コミュニケーションが積極的に取れる機会を作るなど、理系の分野での女性活躍には受け入れる側の努力も必要だと感じました。

 お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。とても楽しい時間を過ごすことができました!


 

 

参考:「科学における女性と女児の国際デー」(2/11) – ユネスコスクール 公式ウェブサイト