1. 主要ページへ移動
  2. メニューへ移動
  3. ページ下へ移動

ブログ

記事公開日

最終更新日

高強度接着剤バインダー ハイブリッドポリマー GENIOSIL ® XB 502

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

はじめに

  あらゆる産業分野において、接着剤は欠かすことができない接合材料の一つです。接着強度が高く垂直面にも使用できる接着剤はエポキシやポリウレタンが一般的です。これら接着剤は長きにわたり自動車やサンドイッチエレメント、表面ラミネート加工、木材加工など数えきれない用途で使用されてきました。しかしながら、製造者やユーザーは次のようないくつかの不都合な側面も受け入れざるを得ませんでした。ポリウレタン接着剤は比較的熱安定性が低く、イソシアネート濃度が高いと施工時に泡が発生する傾向があります。エポキシ接着剤は2液型で黄変しやすいといった特徴があります。Wacker Chemie AGが新しく開発したGENIOSIL ® XBはこれら弱点を克服することができます。

1. Wacker Chemie AGのα-シランテクノロジ-

Wacker Chemie AGは特許化されたα-シランテクノロジーにより、従来のバインダーに代わる新しい変成シリコーンポリマーを開発しました。GENIOSIL ® XB 502はα-シランでポリエーテル両末端を変性したポリマーです。イソシアネートを含有せず大気中の水分で反応硬化し、高強度接着が必要とされる接着剤に最適な製品です。さらにGENIOSIL ® XB 502は環境や安全に関する法規制を満足する配合設計を可能にします。

一 般的な変成シリコーンポリマーは有機ポリマー主鎖に加水分解性シリル基が結合しており、これら成分の加水分解に続く縮重合により硬化します。Wacker Chemie AGの変成シリコーンポリマーも同じグループに分類され、有機ポリマー主鎖はポリエーテルで両末端がジ-またはトリ-アルコキシ基で封止された化学構造となっています。この両末端のアルコキシシリル基はケイ素原子と窒素原子間のアルキレン基を介したウレタン結合によりポリエーテル主鎖に結合しています。アルキレン基はメチレンもしくはプロピレン基のいずれかで、メチレン基の場合α-シラン末端ポリエーテル、プロピレン基の場合はγ-シラン末端ポリエーテルになります。α-シラン末端ポリエーテルは、γと比較しケイ素原子と窒素原子間の距離が短いためアルコキシ基の反応性を高め、架橋にスズ触媒を必要としないのが最大の特徴です。(図1)

a30-img01.png

2. GENIOSIL ® XB 502の概要と特徴

GENIOSIL ® XB 502は硬化することで高架橋密度のネットワークを形成するように開発されているため、高強度接着が可能となります。GENIOSIL ® XB 502はSTP-Eシリーズと比較し単位体積当り多くの反応性シリル基を含有していますが、ポリマーは低粘度になるように最適化されています。硬化後、高密度の加水分解性シリル基は3次元架橋ネットワークを形成しますが、従来の変成シリコーンポリマーよりもさらに高架橋密度であるため、ショアDクラスの高硬度接着剤の設計が可能です。たとえば、従来の変成シリコーンポリマーでは成し得なかった硬さ80(ショアD硬度)の配合設計も可能です。また、構造接着に要求される引張せん断接着強さが10N/mm 2 を超える接着剤の設計も可能です。

a30-img02.png

可塑剤や溶剤を添加しなくても2,000mPa•sと低粘度のため取り扱いが容易で、製造工程を簡略化することができます。様々なフィラーと混合可能で最大70%までフィラーを配合することができます。選定にあたっては、まずは酸化物(水酸化アルミニウム、粉末クオーツ、乾式シリカなど)から使用し、表面処理・未処理の炭酸カルシウムなどの検討を行ってください。もちろんフィラーを含有しない配合設計も可能です。硬化にはGENIOSIL ® GF 9やGENIOSIL ® GF 95、GENIOSIL ® GF 96などのアミン系触媒を併用することを推奨します。有機スズ触媒は逆に貯蔵安定性が損なわれるため不要です。GENIOSIL ® XB 502はGENIOSIL ® STP-Eシリーズとの相溶性に優れるため、これらハイブリッドポリマーと混合することで粘度や硬さ、ゴム弾性を調整することができるなど特性の調整が簡単で配合の自由度が高い製品です。

3. 要求特性を満足させる配合設計

(1) 配合例と基本物性

GENIOSIL ® XB 502は下記表に示されるような汎用原料を使用したシンプルな配合で優れた機械特性を有する接着剤を処方することができます。

a30-img03.png

(2) アミノシラン添加量による指触乾燥時間調整

GENIOSIL ® XB 502の指触乾燥時間は接着強さに影響を与えることなく、アミノシランの添加量で任意に調整できます。GENIOSIL ® XB502と水酸化アルミニウム(ATH)を1:1の比率で混合し、GENIOSIL ® GF 9 (N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン)を0.5~2.5%と変化させた際の指触乾燥時間と引張せん断接着強さを測定した結果を図2に示します。指触乾燥時間はGENIOSIL ® GF 9の添加量で20~120分の幅で調整することができます。一方で、引張せん断接着強さはほとんど変化しません。また、少量のアミノシランで高い接着強さを発現します。図3のように、触媒にDBU(ジアザビシクロウンデセン)のようなアミノ化合物を併用していただくと硬化を促進することが可能です。

a30-img04.png
a30-img05.png

(3) 各種フィラーによる引張せん断接着強さの調整

GENIOSIL ® XB 502と各種フィラーを1:1の比率で混合し、GENIOSIL ® GF 9を1.5%処方し各種接着剤を調製しました。これら接着剤で木材同士の接着試験片を作成し7日間室温で養生した後の引張せん断接着強さを図4に示します。これらの結果から各種フィラーにより接着強さが異なるため、事前に各種フィラーの接着強さを確認したうえで、ご使用になられる基材に適したフィラーを選定してください。

a30-img06.png

(4) GENIOSIL ® STP-E10 による粘度および硬さ調整

  接着剤の硬さや粘度は右写真のようにGENIOSIL ® XB 502にGENIOSIL ® STP-E10をブレンドすることで調整できます。 GENIOSIL ® STP-E10添加量が増加すると硬化後の弾性は大きくなりますが、硬さは低下します。このように接着する基材によって接着強さを調整することができます。

木材接着で大きな引張せん断接着強さが要求される場合、GENIOSIL ® XB 502が100%の配合を推奨します。一方で、アルミニウムのような金属接着はGENIOSIL ® XB 502にGENIOSIL ® STP-E10を3:1の割合で混合し、より弾性のある配合が適しています。

a30-img07.png

4. GENIOSIL ® XB 502の安定性

(1) 耐候性試験機による外観安定性試験

各接着剤(下記配合1、2)をアルミニウム板に塗布した試験片を促進耐候試験機に所定時間供した試験片と試験前の試験片の色差⊿E値を測定した結果を下表に示します。安定化剤の種類にかかわらず一定の外観を保持していることが分かります。特に、配合1の接着剤は若干の黄変が認められますが理論上(ΔE<2)ほとんど知覚できない程度であると考えられます。よって、GENIOSIL ® XB 502は黄変しない透明接着剤の配合が可能です。

配合1:95.5% GENIOSI ® XB 502, 2.5% GENIOSIL ® GF 9, 2.0% TINUVIN ® 123
配合2:95.5% GENIOSI ® XB 502, 2.5% GENIOSIL ® GF 9, 1.0% TINUVIN ® 123, 1.0% HOSTAVIN ® 3206

a30-img08.png

(2) 熱安定性試験

従来の変成シリコーンポリマーもしくはGENIOSIL ® XB 502に2.5%のGENIOSIL ® GF 9および各種安定化剤を所定濃度添加した各種接着剤を作成しました。これら接着剤でアルミニウム板同士を接着し21日間室温で養生させ、150℃雰囲気中に静置しました。これら試験片の所定日数における引張せん断接着強を測定した結果を下図に示します。

従来の変成シリコーンポリマーが2~3日後には接着能力を失っているのに対し、GENIOSIL ® XB 502は25日後も初期値の1/2程度の接着強さを保持しています。よって、GENIOSIL ® XB 502は耐熱性が求められる用途に適した配合設計が可能です。

a30-img09.png

5. GENIOSIL ® XB502のメリット

製造(処方設計)側のメリット ユーザー側のメリット

α-シランテクノロジーにより、

  • 有機スズ触媒が不要
  • 長期間の保存安定性が良好
  • イソシアネートや有機溶剤といった有害な化合物の配合が不要
  • 自由度の高い配合設計

 

低粘度のため、

  • 取扱い、混合が容易
  • ディゾルバーミキサー等の汎用の混合器で調製可能

 

耐久性区分 D1~D4(DIN EN 204)に準拠する耐水性を有する木材接着剤の設計が可能

 

アルミニウムなどの特別なカートリッジが不要

 

GENIOSIL® STP-E基本ポリマーなどのハイブリッドポリマーとの相溶性に優れるため、様々な要求特性を満たす製品設計が可能

  • 1液型製品
  • 有機スズ化合物、イソシアネートおよび有機溶剤を含有しない接着剤
  • フィラー非含有(高透明)もしくはフィラー含有タイプの接着剤の選択が可能
  • 強度発現が早い
  • 硬化時に気泡が発生しない
  • 耐変色性に優れる
  • プライマーレスで金属やガラス、接着剤などの細孔がない木材や、木材に対して接着性が優れる

6. おわりに

  Wacker Chemie AGは独自の特許化されたα-シランテクノロジーを応用して、従来の接着材料の代替品として使用できる新規ハイブリッドポリマーを開発しました。GENIOSIL ® XB 502は従来の変成シリコーンと比較して非常に反応性が高いため触媒として有機スズ化合物が不要、かつフィラーの乾燥工程が必要ないという点が最大の特徴です。また、硬化することで高架橋密度のネットワークを形成するため、高硬度・高強度接着剤の製品設計が可能です。低粘度で様々なフィラーと混合可能で、かつフィラーの乾燥工程が必要ないため一般的な混合装置で製造が可能です。

Wacker Chemie AGが提供するGENIOSIL ® ハイブリッドポリマーでさらなる付加価値が提供できる新製品を開発することが期待できます。

※詳しくは弊社担当者までお問い合わせください。

各製品の詳細情報につきましては、「お問い合わせ一覧」より、お問い合わせください。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加