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「世界労働安全衛生デー(World Day for Safety and Health at Work)」に寄せて
4月28日は「世界労働安全衛生デー」(World Day for Safety and Health at Work)です。ILO(国際労働機関)は労働災害や職業病の防止/予防の大切さに注意を喚起するために、世界労働安全衛生デーにおいて世界的な啓発キャンペーンを実施しています。
旭化成ワッカーシリコーン株式会社においても労働安全衛生を最重要項目と位置付けています。つくば事業所の安全衛生を担当するSite EHS(サイト イーエイチエス)に所属する斎藤さんと佐藤さんにお話しを聞きました。
Site EHSの仕事について教えてください。
EHSとは環境(Environment)・衛生(Health)・安全(Safety)の英語の頭文字を取った言葉で、私たちはこの3分野に関わる仕事を行っています。
環境面では、つくば事業所内の電気使用量、取水量、重油使用量、産業廃棄物量、有害物質やCO2の排出量など環境影響の大きい項目をとりまとめ、国の機関やワッカードイツ本社へ報告しています。また、とりまとめたデータを利用し、事業所での使用排出量削減や監査対応に繋げています。その他、ISO14001(環境マネジメントシステム:EMS)の事務局として、環境法令の情報収集、とりまとめ、そして社内展開を行っています。
安全衛生面では、事業所全体の安全の推進を目的とし、労働安全衛生法などの各種法規制を順守するための対応、事故災害報告のとりまとめ、安全衛生委員会の運営などを行っています。
Site EHSの仕事の難しいところ、またやりがいはありますか?
Site EHSの仕事は法規制を順守すること、社員に順守するよう促すことが基本です。法律の独特の言い回しや込み入った内容の理解に苦労することもありますが、セミナーへの参加、外部コンサルタントの活用や部署内で情報共有をしながら社内の法令の体制に貢献したいと思っています。EHSの仕事は社内のコンプライアンスに関わる重要な仕事だと感じています。
EHSは事業所全体に関連しています。そのため、他部署との連携は不可欠です。担当部署において測定したデータを報告してもらう、改善が必要な場合は対応をお願いすることが多くあります。法規制をわかりやすく伝え、改善の必要性を丁寧に説明し、納得してもらうまでコミュニケーションをとるようにしています。時間がかかることもありますが、他部署と協力して課題を達成していく点は非常にやりがいがあります。また、私たちが実施したことで、事業所全体のプロセスが良くなっていく時は頑張ってよかったと思います。また、対話を重ねることで最新の技術を学ぶことができるのは楽しいです。
今年3月からワッカーグループでも一斉にセーフティーキャンペーン「For Our Safety/私たちの安全のために」がスタートしました。キャンペーン内容について教えてください。
「Because everyone deserves to get home safe and sound every day./全ての従業員が毎日、安全に帰宅できることを最優先に」をワッカーグループの全世界共通の目標として掲げ、世界中のすべてのワッカーの拠点で安全に関するキャンペーンを開始しました。これまでワッカーおよび 旭化成ワッカーシリコーン株式会社(以下、AWS)では「Safety is 1st priority/安全第一」をモットーに安全に取り組んできました。これからはさらに一歩踏み込んで、「Safety is Precondition for everything we do./安全は、私たちのすべての行動の前提条件」として取り組んでいくことになりました。私生活においても、職場においても、安全は非常に重要であり、妥協も許されません。全社員が安全に出社し、安全に家に帰らなければいけません。
私たち一人ひとりが安全に責任を持ち、製造・技術・営業・間接部門に関わらず、ワッカーの全世界共通の目標を達成すべく、共通の基準とルールを共有し、全社一丸となって安全文化の醸成に取り組んでいきます。
今後のスケジュールがあれば教えてください。
今後は、今回のキャンペーンの重要な要素でもあるライフセービングルールズの理解を深めるイベントや取り組みを予定しています。また、AWSではつくば事業所主催にてワッカーでの取り組みに先駆け、安全への理解を高めるためのイベント、Safety Dayを2022年から毎年実施しています。このSafety Dayとのコラボイベントも計画中です。
キャンペーンのインプリメンテーションマネージャーも務める斎藤さん。
2025年の世界労働安全衛生デーのテーマは「安全衛生の革命:職場におけるAIとデジタル化の役割」です。EHSとAIとデジタル化はどのように関連していると思いますか?また、EHSに活かせる技術はあると思いますか?
AWSでは既にAGF(無人搬送フォークリフト)や自動サンプル配送ロボット(Ninjya)をつくば事業所内で活用し、IoT技術と融合した業務効率の向上に取り組んでいます。また、今後はAIをEHSの業務に利用できないかと考えています。例えば、これまでの危険予知活動の情報や、自社あるいは他社の事故災害事例などの情報をAIに学習させ、作業の危険予知活動に役立てたいと考えています。また、危険予知と同様に、安全衛生教育をAIに学習させ、社員のトレーニングに活用することも可能だと思います。さらに、熟練作業者や技術者の経験をAIに学習させることで、速やかな引継ぎや、属人的な作業を減らすことにもデジタルツールを活用していけるのではないかと考えています。
危険有害作業や粉じん作業をロボットが代行したり、高所点検や酸欠可能性のある場所での点検にロボットを活用した事例にも興味があります。他にも仮想現実(VR)を活用して設備を設計することで、より精度の高い設計が出来るかもしれません。デジタルを活用することで少ないリソースでも充実した対応が可能になると思います。
国においてもAI等の新技術を活用した安全対策の取り組みが始まっており、法規制改正により点検・記録・周知も電子化や機械化でできるようになってきたため、デジタルツールを現場で使用しやすい環境がさらに整備されています。
今後の目標を教えてください。
AWSでは第3工場が新設されるなど、今後益々の事業拡大が見込まれます。設備の新設や取扱い物質の増加の際は、適応法令の確認と順守が必須ですので、最新の情報とその正確な理解をもとに事業所内で連携して法令対応し、事業所の安定操業に貢献したいと考えています。
また、会社の成長とともに、従業員の増加も想定されますが、入社年数に関わらず安全を前提条件とする意識を全員がもてるよう、Site EHSの立場からできることを真摯に取り組んでいきたいです。
ちょっとアツくなった斎藤さんに冷静に解決策を提案する佐藤さんのナイスコンビ。忖度なく意見を交わせるパートナーの存在は非常に貴重で、その存在が少し羨ましいと感じました。明るく前向きな斎藤さんと佐藤さんのお二人がマネージャーと共につくば事業所の安全衛生に取り組んでいます。お話しを聞くまでEHSの業務にIoTやAIの技術をどう活かすのかわからなかったのですが、お二人からはアイディアが止まらず、今後ぜひ積極的に取り入れていただきたいです。安全衛生は正しい知識とコミュニケーション。最新の技術の力を借りつつ、仲間を危険な目に合わせてはいけないという相手を慮る心を忘れないようにしたいと思いました。
お忙しい中インタビューにご対応いただきありがとうございました。楽しい時間をありがとうございました!
参考:中災防:海外トピックス 世界労働安全衛生デーとは
World Day for Safety and Health at Work 2025 | International Labour Organization