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低粘度、高透明液状シリコーンゴム SLJ40914 A/B, SLJ40531 A/B

はじめに
シリコーンゴムは他の素材に比べて耐熱性、耐候性、柔軟性などに優れるため、過酷な条件下でも使用することができる。そのうち、高透明性を持つシリコーンゴムは、各種光学用途などに利用されており、例えば、自動車用ヘッドライト関係にはLUMISIL ® 7601グレードが使用されている。近年、より精密な加工や生産性の向上への要求が強まっており、従来よりも、より加工性に優れ、また、作業性の良い材料が求められている。今回、低粘度で加工性に優れた高透明液状シリコーンゴムを紹介する。
1. 高透明液状シリコーンゴムに求められる特性
さらに、高透明性のシリコーンゴムは低揮発成分が少なく、収縮による変形が少なく、例えば、LED部品、自動車用ライト関係部品、光学用レンズ部品などの高精度を要求される用途に適している。
また、高透明性のシリコーンゴム製品は経年劣化に強いだけでなく、耐水性や電気絶縁性にも優れており、特に、ガラス素材に比較して軽量、かつ、柔軟性に優れることから、ガラス素材の使用が難しい用途に適している。
他の素材とシリコーンゴムの特性比較例を表1に示す。

表1 他素材とシリコーンゴムとの特性比較例
項目 | シリコーンゴム | ポリカーボネート | アクリル | ガラス | |
---|---|---|---|---|---|
光学特性 | 透明性 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ |
耐久性 | 耐熱性 | ◎ | ✖ | ✖ | ◎ |
耐候性 | ◎ | ✖ | 〇 | ◎ | |
意匠性 機能性 |
柔軟性 | ◎ | ✖ | ✖ | ✖ |
軽量化 | ◎ | 〇 | 〇 | ✖ | |
設計自由度 | ◎ | ✖ | ✖ | ✖ |
2. 高透明液状シリコーンゴムの加工特性
そのため、安定した良好な流動性が得られ、機能性と意匠性を兼ね備えた、複雑な形状を持つレンズ部品やLED導光路部品などの製造に非常に適している。



3. 従来の高透明液状シリコーンゴムの問題点
高透明液状シリコーンゴムは、例えば、光学用途では、高い寸法精度が求められる製品や、小型で複雑な形状の製品に用いられる場合が多いが、従来の高透明液状シリコーンゴムは粘度が高く、せん断速度依存性も、市場の要求に十分対応できるレベルに至っていない場合があった。
4. SLJ40914 A/B, SLJ40531 A/Bの特長
そこで、今回、低粘度の高透明液状シリコーンゴムのプロトタイプとして、SLJ40914 A/BとSLJ40531 A/Bを開発した。両者は硬さが異なっており、SLJ40914 A/BはShore A硬さで30、SLJ40531 A/Bは70に相当する。
従来品と両品の粘度の例を表2に示す。いずれも粘度は従来品より低く、これによって低圧での射出成形がさらに容易となる。また、せん断速度依存性が非常に小さく制御できるように設計されているため、従来品よりもさらに安定した、良好な流動性が得られる。その結果、機能性と意匠性を兼ね備えた、複雑な形状を持つレンズ部品やLED導光路部品などを、高い精度で量産することが可能となる。
硬化物の常態物性と透過率の例を表3に示す。硬化物の透明性も従来品と同等に非常に高く、長期間に亘って高い透過率を維持することができる。2mm厚で作製したシートでは、製造後540日保管後の透過率もほとんど低下しておらず、非常に安定である。
表2 SLJ40914 A/B、SLJ40531 A/BとLUMISIL® LR7601との硬さと粘度の例
項目 | 単位 | SLJ40914 A/B |
SLJ40531 A/B |
LUMISIL® LR7601/50 A/B |
LUMISIL® LR7601/70 A/B |
---|---|---|---|---|---|
硬さ (Shore A) | - | 30 | 70 | 50 | 70 |
粘度 (せん断速度 0.89 s-1) | mPa・s | 11,900 | 10,900 | 29,000 | 31,000 |
粘度 (せん断速度 10 s-1) | mPa・s | 11,800 | 10,900 | 28,000 | 28,000 |
表3 SLJ40914 A/B、SLJ40531 A/Bの常態物性と透過率の例
項目 | 単位 | SLJ40914 A/B |
SLJ40531 A/B |
---|---|---|---|
硬さ (Shore A) | - | 30 | 70 |
密度 | g/cm3 | 1.02 | 1.05 |
伸び | % | 270 | 80 |
引張強さ | MPa | 6.0 | 10.8 |
硬化シート透過率 (初期) | % | 92 | 91 |
硬化シート透過率 (540 日後) | % | - | 90 |
硬化条件: 130℃/10分、二次硬化 200℃/4 時間
測定条件: JIS K 6249 準拠
透過率: t=2mm, 400nm, 日本分光社製分光光度計 V-670
終わりに
今回、新たに低粘度、高透明性の液状シリコーンゴム製品のプロトタイプとして、SLJ40914 A/BとSLJ40531 A/Bを開発した。従来品よりも作業性に優れ、機能性と意匠性を兼ね備えた、複雑な形状を持つレンズ部品やLED導光路部品などを、高い精度で量産することが可能となる。今後、光学用途だけでなく、幅広い用途での展開を期待する。
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