アミノ変性シリコーンは、カチオン化したアミノ基がアンカーとなるため、毛髪へ付着性が高く、トリートメント、ヘアマスクなど高いコンディショニング効果のあるヘアケア化粧品の多くに配合されている。しかし、一般的なアミノ変性シリコーンでは、柔らかさやしっとり感などのコンディショニング効果は期待できるが、ドライヤーやヘアアイロンによる毛髪への熱ダメージを防ぐヒートプロテクション効果や染色した毛髪の褪色を抑制する褪色抑制効果などの機能は十分でなかった。上記の要求を満たすために、Wacker Chemie AGは独自の技術を用いて、高い反応性を持つ被膜形成性アミノ変性シリコーンを開発した。
本稿では、ダメージを受けた毛髪を、疎水性の高い健常毛のような仕上がり感に仕上げる被膜形成性アミノ変性シリコーンのエマルジョン BELSIL® ADM 6300 E, BELSIL® ADM 8301 Eの優れた特長を紹介する。
白人健常毛 |
ブリーチ処理 + ノンシリコーン コンディショナー |
ブリーチ処理 + BELSIL® ADM 8301 E配合の コンディショナー |
図1. 被膜形成性アミノ変性シリコーン
処理毛髪の疎水性評価
(1) 褪色抑制効果の評価
ブリーチ処理後、赤色に染色した白人毛束を用いて、市販のシャンプー(シリコーン未配合)による2 回の洗浄とコンディショナー(シリコーン分2%配合)によるトリートメント処理のサイクルを6 回連続で行い、色差計を用いて色変化の程度を評価した。また、結果はノンシリコーンのコンディショナーで処理した場合と比較した。色差(ΔE)はCIE-LAB-Systemに基づき、以下の計算式で算出される。
ΔE = [(ΔL*)² + (Δa*)² + (Δb*)²]1/2
※BELSIL® ADM 8301E 配合コンディショナー処方
(シリコーン分として2%配合)水、ステアリルアルコール、ベヘントリモニウムクロリド、ヒドロキシエチルセルロース、セタノール、ポリソルベート80、ステアラミドプロピルジメチルアミン、クエン酸、EDTA-4Na、防腐剤
図2. 褪色抑制効果試験フロー |
図3. 測定イメージ BYK Gardner (色差計)と
CIE-LAB-System
L = Brightness, a = color green – red, b = color blue – yellow, ΔE = [(ΔL*)² + (Δa*)² + (Δb*)²]1/2
|
図4. 褪色抑制効果の評価結果 |
|
図5. DSCのピーク温度の比較 |
(3)SEM-EDXによる毛髪表面の観察
SEM-EDXによる毛髪表面の観察により、BELSIL® ADM 8301 E配合のコンディショナーで処理した毛髪は、キューティクルのエッヂにSi が効率よく付着していることが分かった。
この結果から、BELSIL® ADM 8301 Eの被膜形成性により、キューティクルエッヂが保護され、褪色抑制効果、ヒートプロテクション効果を発揮することが示唆された。
Wacker Chemie AGが独自の技術を活かして開発した被膜形成性アミノ変性シリコーンのキューティクルエッヂへの選択的な付着性、褪色抑制効果、ヒートプロテクション効果における優れた効果が示された。
一般的なアミノ変性シリコーンとは異なる構造を持ち、高い反応性を持つため、毛髪に柔らかさやしっとり感などのコンディショニング効果を与えるだけでなく上記のような機能を付与する。リンスオフコンディショナーから高いコンディショング効果を訴求するヘアケア化粧品において、様々な特性の向上に推奨できる好適な原料である。
表1.製品概要
上記は代表値であり、規格値ではございません。
被膜形成性アミノ変性シリコーンの様々な特長を紹介した。外観が透明なマイクロエマルジョンであるBELSIL® ADM 8301 Eは、ヘアミストや透明シャンプーなどの透明処方に好適である。マクロエマルジョンであるBELSIL® ADM 6300 Eは、有効成分が多く、少量で効果を発揮し、幅広いヘアケア化粧品で使用可能である。