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シリコーン活用辞典

シリコーンは原材料、素材としてさまざまにカタチを変えて、多彩な産業分野で活用され、私たちの生活や経済活動に欠かせない素材として幅広く活躍してきました。
その可能性はさらに大きく、環境面でもその適応性に優れていることから、21世紀を迎えてさらにその重要性は高まっています。
一方その存在があまり知られていないのもシリコーン。

どこで何に活用されているの?そもそもシリコーンとはなに?
ここでシリコーンについてもっとよく知っていただくコーナーを設けました。

「シリコーン」と「シリコン」は違うもの?

「シリコーン」と「シリコン」は違うもの?

地表近くに存在する元素の割合

 

よく混同されがちな2つですが、「シリコーン」と「シリコン」は似て非なるものです。
シリコン(Silicon)とは、ケイ素原子のみで構成される金属状の化合物(金属ケイ素とも言う)のこと。

多結晶ポリシリコン、単結晶ポリシリコンなどがあり、パソコンのCPU、太陽電池などに使用されています。
一方シリコーン(Silicone)は、ケイ素と酸素の結合を骨格とした液状やゴム状、樹脂状の化合物です。 用途に応じて様々な形状に姿を変え多種多様な産業分野で使用されています。
ともにケイ素でできたものですが、生成される製品は全くの別物になるのです。

シリコーンの主成分であるケイ素は地表近くに存在する元素の中で酸素に次いで2番目に多く、枯渇する心配のない元素と言えます。

ケイ素は酸素との親和性が強いため、自然界では純粋な状態では存在せず、主にシリカ化合物、特にマグネシウム、カルシウム、鉄、マイカを含むケイ酸塩として知られており、砂、水晶、石英の状態として存在しています。

 

シリコーンの基本的な特徴

シリコーン製品の種類

日常われわれが接しているシリコーン製品を形状の違いによっておおざっぱに分けると以下のように分類されます。

◆シラン類
◆シリケート
◆シリコーンオイル
 ジメチルシリコーンオイル
 変性シリコーンオイル
 シリコーン二次製品(エマルジョン、溶液、グリース、等)
◆シリコーンゴム
 HTV(HCR)
 LSR(液状シリコーンゴム)
 RTV-1、2
◆シリコーンレジン
  高粘度オイル シリコーンゴム シリコーンレジン

シリコーンの物理的特長

シリコーンは有機系製品に比べ以下の物理的特長を持っています。
シロキサン結合に由来する特長とケイ素原子に付いた有機基に由来する特長を以下に示します。
これらの形状と物性を利用することで様々な用途で性能を発揮することができるのです。
 

シリコーンの基本構造

ケイ素原子は4本の手を持っています。 この4本の手は、酸素を介してほかのケイ素原子と手をつなぎどんどん長くなっていく性質があります。 このケイ素と酸素でつながっていく結合をシロキサン結合と言います。 またケイ素の手にはシロキサン結合のほかにメチル基、フェニル基、その他の官能基(有機基ともいう)などがついて様々な性質を付加します。

 

右図のR1,R2,R3,R4は同じものでも、異なったものでもよく、このシランひとつでは物性の幅に限りがあるため、お互いにつながりあって大きくなること(シリコーンオイル、シリコーン樹脂など)で様々な性質を発現します。 酸素を介して手をつないでいくシランのタイプには、つぎの4通りがあります。

 

 

シリコーン製品はすべてこれら、M,D,T,Qユニットの組み合わせでできています。

シリコーンオイルの構造

シリコーンオイルは、Dユニット同士が鎖状につながったものです。
ざっと、粘度10 cSt(AK10)で16個、100 cSt (AK100)で70個、1000 cSt (AK1000)で400個がつながっている計算になります。AKオイルの場合、実際には、放ってある間にどんどん伸びていってしまっては困るので、Mユニットが両端にくっついて、それ以上伸びないようにふたをしている格好になっています。

シリコーンゴムの構造

シリコーンオイルはシロキサンがどんどん長くなってどんなに粘度が高く、固体のような形になってもゴムになることはありません。一見固体状に見えても、時間がたてば流れて変形してしまいます。
そこで、ゴム状にするには、長い紐(シロキサンチェーン)同士に、橋を架けて、要所要所を止めてしまえば良いのです。
したがって、Tユニット(3方分岐)、Qユニット(4方分岐)をところどころにいれれば、ゴムの出来上がりです。

シリコーンレジンの構造

シリコーンレジンは、そもそも一番初めに実用化されたシリコーン製品で、初期には直線状に長く繋がったシリコーンオイルを作る技術が開発されておらず、短い分子のシランがお互いにぎっしりと架橋しているものしか作ることができませんでした。
従って、とても硬く、ガラス状の性質を持った材料として使われていました。
高密度の架橋構造を得るために、Tユニット(3方分岐)、Qユニット(4方分岐)のシランを主体として手をつながせることで、互いにがっちりとスクラムを組んだ剛構造のシリコーンレジンが得られます。

Tユニットを主体にDユニットを組み合わせたレジンがDTレジンと言われます。 一般的に耐熱塗料のバインダーや絶縁材料として使用されます。


DTレジンの構造

また、Qユニットだけを架橋させ、末端の反応性を止めるために、Mユニットを加えたものは、MQレジンと言われます。
Qユニットだけで、がっちりと架橋を架けることができると、シリコーンは石英や水晶と同じ構造になりますが、末端の反応基をトリメチルシランで修飾することで、反応を止め、且つ有機溶剤への溶解性が得られるようになります。

シリカの構造

当社はシリコーンメーカーとしては例外的にフュームドシリカ(乾式シリカ)HDK®を製造販売(製造はWacker Chemie社)しています。

HDK® は高純度の四塩化ケイ素を水素とともに燃焼させることで得られるこれまた高純度の白色微粉末です。化学式は石英などと同じSiO2ですが、結晶構造を持たない非晶質構造になっています。

 


HDK®の製造方法

シリカの表面はシリコーンと異なりシラノール基(Si-OH)が現れていて極性が大きく、凝集力が強く働く構造をしています。
その強い凝集力により、
 1.液体の増粘およびチクソトロピー性(揺変性)付与
 2.分散助剤(強い凝集力によって、分散させたい粒子の表面を覆ってしまう)
 3.粉体の流動性改善、固結防止(表面を覆ったシリカがベアリングの作用をする)
 4.粉体の帯電性調整(荷電ドラム表面への付着性向上)
 5.吸着材料
などの目的で使用されています。

シリコーン製品が使用されている主な産業・用途

シリコーン製品は様々な産業分野・用途で使用されています。
以下にシリコーンが使われている代表的な産業分野、用途を列記します。

【自動車】  

FIPG(ガスケットの一種)、シリンダーヘッド ガスケット、クーラー、液体クラッチ、ヘッドライト、エアーフィルター、ダンパー、エアーバッグ

【土木・建築】  

浸透性吸水防止剤(撥水剤)、建築塗料(SREP)用バインダー、石材の風化防止、シーラント、グレージング、ジョイントテープ

【化学】  

農業化学、食品、石油、洗剤、ワックス、タイヤ、廃水処理

【繊維・皮革】  

柔軟剤、ラバーコーティング、ファインコーティング、撥水処理、消泡剤、中綿処理、繊維処理

【化粧品】  

ヘアケア、スキンケア、メイクアップ、消臭剤、口腔剤

【モールディング】  

型取り、パッド印刷

【絶縁・断熱材】  

ガラス繊維製品、マイカ用含浸剤、エンジン・発動機、変圧器、電灯

【電気】  

自動車用電装品、装飾用電気製品、半導体、光電池、複合絶縁材、碍子用コート材、電線用付属品

【電線】  

絶縁ケーブル、鎧装、被覆、含浸剤、ポリエチレン架橋剤

【家庭用品】  

ラジエーター(ヒーター)、アイロン、調理器具、ガラス容器

【輸送(除・自動車)】  

航空、宇宙、造船、鉄道

【機械】  

各種機械、測定機具、フィルター・クリーンルーム

【金属】  

精密鋳造、製パン用トレイ、スラグ、溶接用添加剤

【紙】  

剥離紙、フィルム

【塗料・インク】  

耐熱塗料、防食塗料、PCM、樹脂変性、塗料添加剤、印刷用インク

【ゴム】  

可塑剤、型成形品、押出成形品、射出成形品

【コピー機】  

フューザーオイル、ローラー、ベルト、トナー

【医療】   有機合成、製薬、制酸・消泡剤、補綴、医療用チューブ、マスク、歯科用印象材
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