このような市場動向を受けて、高機能かつ処方適合性の高い新規原料開発や処方の開発が求められている。本報では、メイクアップ製品とヘアケア製品に対して、他の処方原料と相溶性が良いことから処方適合性が高く、かつツヤを付与し得るWacker Chemie 社の新規原料BELSIL® PF 200を紹介する。1),2)
本報で紹介する製品は、シリコーンポリマー(ポリジメチルシロキサン)鎖の一部がフェニル基で変性されたシリコーン(以下「フェニル変性シリコーン」)は、高い屈折率を有することから、パーソナルケア製品において、光沢・ツヤ、伸展性や感触付与効果を目的として、ヘアケア製品やポイントメイク製品などに処方される。しかしながら、フェニル変性シリコーンは非極性原料であることから、一般にオイル系処方で使用されることが多い。
本稿では、異なる3種の変性基を構造に持つことで各種変性シリコーン原料の長所を兼ね備え、且つ、水系処方適合性に優れたユニークな新規原料であるドイツワッカーケミーAG社のBELSIL® PF 200を紹介する。BELSIL® PF 200は、ポリエーテル基とアルキル基、フェニル基で変性された両親媒性のシリコーンオイルである(図1、表1)。様々な極性・非極性溶媒との相溶性に優れるため、ヘアケア、スキンケア、カラーコスメ製品のオイル系だけでなく水系処方にも安定に配合することが可能となる(表2)。
ヘアケア処方では、毛髪に光沢と柔らかさを与え、スキンケア処方では、ソフトでなめらかな感触と肌に自然な輝きを与え、カラーコスメ製品では、顔料分散性を向上させるとともに光沢のある鮮やかな発色を処方に付与する。
さらに他の乳化剤を添加することなく、O/W型のマイクロエマルジョンを容易に作成することができ、透明な水系の処方にも安定に配合されることも特徴の一つである(写真 1)。
図1.BELSIL® PF 200の構造イメージ |
表1.製品の物性一覧 | 表2.化粧品処方へのBELSIL® PF200 | ||||||||||||||||||||||||
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写真1.BELSIL® PF 200の20%水溶液外観 |
(1)フェニルレジン溶解による屈折率調整
高屈折率を有するフェニルレジン(BELSIL® SPR 45 VP)をBELSIL ® PF 200に溶解(~60℃加熱)させた時の屈折率の変化を
(図2)に示した。フェニルレジンを溶解させることで、更なる光沢率の向上が確認された。
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(左;BELSIL® SPR 45 VP、右;溶解後の25%溶液) | |||||
図2.濃度に対する屈折率(n25D)変化 |
(2)透明シャンプー処方における櫛通り試験結果 透明シャンプー処方に本品を処方中2%配合し、常法により処理した毛束の櫛通り試験の結果を(図3)に示す。ブランク処方と比較して櫛通り低減率が向上することが示された。 |
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図3.櫛通り試験結果 |
(3)リップスティック処方における光沢比較結果 |
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図4.光沢評価結果 |
本報では複数の異なる変性基を有するシリコーン原料BELSIL® PF 200を紹介した。ヘアケア・スキンケア・カラーなどの各化粧品処方において感触、光沢、相溶性などに優れた効果を付与することが期待される。
BELSIL® PF 200は、О/W系処方では透明系処方に適応可能であり、フェニル変性シリコーンオイルやフェニル変性レジンと併用することで光沢・ツヤを付与する効果をもことから、現在の化粧品のトレンドをとらえたシリコーンオイル原料であると言える。メイクアップからヘアケア製品まで処方の一助とされることを期待する。
BELSIL® PF 200
- 化粧品表示名称;PEG/PPG-20/20フェニルイソプロピルカプリリルジメチコン
- INCI;PEG/PPG-20/20 Phenylisopropyl Caprylyl Dimethicone
BELSIL® SPR 45 VP
- 化粧品表示名称;ポリフェニルシルセスキオキサン
- INCI;POLYPHENYLSILSESQUIOXANE
参考文献
1) 株式会社富士経済 「化粧品マーケティング要覧 2015」
2) 株式会社矢野経済研究所 「化粧品市場に関する調査結果 2015」
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