界面活性剤フリー・水分散性良好な化粧品用シリコーンエラストマーパーティクル

 

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はじめに

 化粧品用途では、光の乱反射による外観の均一化(ソフトフォーカス効果)、感触付与、皮脂などを吸油し、持続性を与える等の目的で、有機(アクリル、ナイロン)、無機(顔料、フィラー、シリコーン)などの様々な粉体(パーティクル)が用いられている。
中でもシリコーンパーティクルは、極性油中での化学的な安定性に優れており、また、化粧品の特性上重要となる感触付与の面において、UV吸収剤やその他極性オイル類のべたつきを低減させる目的で、処方に好んで配合されている。
  一方で、シリコーンパーティクルは、一般に界面活性剤を用いてシリコーンを乳化し、硬化を行った後、さらに洗浄、乾燥、粉砕、表面修飾、分級するといった多段階の工程を経て製造されるため、極めて高価な化粧品原料として認識されている。また、水系処方が好まれる傾向がある昨今の化粧品において、疎水性のシリコーンパーティクルを水相に分散させるという需要はあるが、現行のシリコーンパーティクルでは技術的に困難であった。そのため、良好な水分散性をコンセプトとするエラストマーパーティクルエマルジョンも開発されたが、界面活性剤によりシリコーンパーティクルが水中に分散された状態となっているため、界面活性剤が発現するゲル相により粒子の分散が妨げられるという問題があった。また、有機系の界面活性剤は、少なからず皮膚感作性を有するため、シリコーンが本来得意とする生理的な不活性が損なわれることとなり、好ましくなかった。
 本報では、前述のシリコーンエラストマーパーティクルの課題を克服すべく、有機系の界面活性剤を使わずにシリコーンエラストマーパーティクルエマルジョンを開発し、さらには乾燥したパーティクルを得て、それぞれの性能を検討したので報告する。

1.新規エラストマーパーティクル

 本報で紹介するSLJ 90005シリーズは、Wacker Chemie  AG.の技術をもとに開発された界面活性剤フリーのエラストマーパーティクルである。水、アルコール系溶媒へ凝集することなる分散することが出来、肌への良好な密着性、塗布時の“よれにくさ”や、さらさらとした感触を付与することを特徴とする。
 本報では、SLJ90005シリーズの水への分散性評価、肌への密着性、極性油の感触改良効果、ソフトフォーカス効果について検証した結果を紹介する。


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図1.SLJ 90005シリーズドライパーティクル外観(SEM) 

 

2.試験方法

(1)エラストマーパーティクルエマルジョンの水への分散性の評価

 試験試料は、SLJ 90005シリーズ(エマルジョン)とその比較試料として有機系界面活性剤(セテス-13、1.0 %)を用いて乳化したエラストマーパーティクルエマルジョンを用いた。
 50 mLスクリュー管瓶に水を20 mL加えた。さらに2.0 gのエラストマーパーティクルエマルジョンを加え、手で20回振とうし、分散状態を評価した。


(2) 肌への密着性

 半径5.5 cmのウレタン製人工皮膚に、0.01gのドライパーティクルを塗布し、塗り広がり性を確認後、人工皮膚から自然落下するパーティクルの量を目視で比較した。


(3) 極性油の感触改良効果

 メトキシケイヒ酸エチルヘキシル30gに12gのドライパーティクルを添加し、スパチュラにて混合撹拌した。混合液を皮膚に塗布した際の「べたつき」と「滑らかさ」、「肌なじみ」の項目についてパネルテストを行った。

 

(4) ソフトフォーカス効果

 毛穴プリントのある人工皮膚の左半分に、一定量のパーティクルを塗布し、未塗布の右半分と毛穴の目立ち具合を目視で比較評価した。

               

                表1.試験で用いた試料一覧
 No.  詳細  粒子径/μm
 1  開発エマルジョン
 SLJ 90005シリーズの乾燥パーティクル
 10~12
 2  類似品1
 ドライエラストマー/レジンパーティクル
 10~12
 3  類似品2
 ドライシリコーンエラストマーパーティクル
 4

 

3.結果

 (1) 水への分散性の評価

 (図2)にSLJ 90005シリーズと類似品エラストマーパーティクル(界面活性剤1.0 %)の水分散液の外観を示す。界面活性剤1.0 %エラストマーパーティクルは未分散の凝集体が見られたのに対し、SLJ 90005シリーズは均一に分散され、より良好な水への分散性を示した。

 
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SLJ 90005シリーズ  界面活性剤1.0 %含有処方
                     図2.SLJ 90005シリーズ(エマルジョンタイプ)の水分散性


(2) 肌への密着性

 (表2)に肌への伸展性・密着性の評価結果を示す。SLJ 90005シリーズは、人工皮膚に対し、良好な塗布感が得られ、また肌への密着性においても良好な結果が得られた。

 

                 表2.伸展性、肌への密着性評価結果
 評価項目 SLJ90005シリーズ  類似品1  類似品2
 塗布時の滑らかさ  △  ×(ブロッキング)
 肌への密着性  〇  △(白浮き、剥がれ多)
         外観         hidari2.jpg  naka2.jpg  migi2.jpg
 

◎; 極めて効果高い、○; 効果高い、△;効果なし、×;劣る

破線内は剥がれ落ちたパーティクル



(3) 極性油の感触改良効果

 SLJ 90005シリーズの乾燥パーティクルは、他社品のパーティクルより、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルのべたつき、肌なじみの悪さの改良並びに、滑らかな感触へと改質する効果が高い結果となった。

 

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 図3.極性油の感触改良効果                     

 

(4) ソフトフォーカス効果

 人工皮膚の上にそれぞれのシリコーンパーティクルを塗布し、ソフトフォーカス効果を比較した結果を(表3)に示す。SLJ 90005シリーズのドライパーティクルは、同等の粒子径を有するパーティクル(類似品1)よりも外観の均一性が高いく、類似品の粒子径が小さいパーティクル(類似品2)よりも白浮きが少ない結果となった。

               

               表3.ソフトフォーカス効果評価結果
  SLJ90005シリーズ  類似品1  類似品2
 ソフトフォーカス効果  〇  △
(白浮き)
 外観 3left.jpg 3centr.jpg 3right.jpg

 


4.まとめ

 本報では、従来からのシリコーンエラストマーパーティクルの課題であった水への分散性、並びに高価格であることを改善することを目的として、有機系界面活性剤を用いないコンセプトで開発されたエマルジョンSLJ 90005シリーズを紹介した。従来型のシリコーンエラストマーパーティクル(ドライエラストマー/レジンパーティクル、シリコーンエラストマーパーティクル)と比較した各種評価試験では、水への分散性、肌への密着性、極性油の感触改良効果、ソフトフォーカス効果についていずれも優れた特性を示す結果が得られた。

 

 

 

5.おわりに

 本開発品SLJ 90005シリーズは、従来のシリコーンパーティクルと同等もしくはより優れた感触改良効果とソフトフォーカス効果を有しながら、水分散性が良好であり処方適合性の高いパーティクルである。また、肌への密着性にも優れることから、従来のシリコーンパーティクルが配合されている化粧品での差別化が提案できることはもとより、他の有機系、無機系のパーティクルを使用してきた製品種までの幅広い用途展開が今後期待される。

 

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