本報で紹介するSLJ 90005シリーズは、Wacker Chemie AG.の技術をもとに開発された界面活性剤フリーのエラストマーパーティクルである。水、アルコール系溶媒へ凝集することなる分散することが出来、肌への良好な密着性、塗布時の“よれにくさ”や、さらさらとした感触を付与することを特徴とする。
本報では、SLJ90005シリーズの水への分散性評価、肌への密着性、極性油の感触改良効果、ソフトフォーカス効果について検証した結果を紹介する。
図1.SLJ 90005シリーズドライパーティクル外観(SEM) |
(1)エラストマーパーティクルエマルジョンの水への分散性の評価
試験試料は、SLJ 90005シリーズ(エマルジョン)とその比較試料として有機系界面活性剤(セテス-13、1.0 %)を用いて乳化したエラストマーパーティクルエマルジョンを用いた。
50 mLスクリュー管瓶に水を20 mL加えた。さらに2.0 gのエラストマーパーティクルエマルジョンを加え、手で20回振とうし、分散状態を評価した。
(2) 肌への密着性
半径5.5 cmのウレタン製人工皮膚に、0.01gのドライパーティクルを塗布し、塗り広がり性を確認後、人工皮膚から自然落下するパーティクルの量を目視で比較した。
(3) 極性油の感触改良効果
メトキシケイヒ酸エチルヘキシル30gに12gのドライパーティクルを添加し、スパチュラにて混合撹拌した。混合液を皮膚に塗布した際の「べたつき」と「滑らかさ」、「肌なじみ」の項目についてパネルテストを行った。
(4) ソフトフォーカス効果
毛穴プリントのある人工皮膚の左半分に、一定量のパーティクルを塗布し、未塗布の右半分と毛穴の目立ち具合を目視で比較評価した。
表1.試験で用いた試料一覧 | ||||||||||||
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(1) 水への分散性の評価
(図2)にSLJ 90005シリーズと類似品エラストマーパーティクル(界面活性剤1.0 %)の水分散液の外観を示す。界面活性剤1.0 %エラストマーパーティクルは未分散の凝集体が見られたのに対し、SLJ 90005シリーズは均一に分散され、より良好な水への分散性を示した。
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図2.SLJ 90005シリーズ(エマルジョンタイプ)の水分散性 |
(2) 肌への密着性
(表2)に肌への伸展性・密着性の評価結果を示す。SLJ 90005シリーズは、人工皮膚に対し、良好な塗布感が得られ、また肌への密着性においても良好な結果が得られた。
表2.伸展性、肌への密着性評価結果 | ||||||||||||||||||||
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(3) 極性油の感触改良効果
SLJ 90005シリーズの乾燥パーティクルは、他社品のパーティクルより、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルのべたつき、肌なじみの悪さの改良並びに、滑らかな感触へと改質する効果が高い結果となった。
図3.極性油の感触改良効果 |
(4) ソフトフォーカス効果
人工皮膚の上にそれぞれのシリコーンパーティクルを塗布し、ソフトフォーカス効果を比較した結果を(表3)に示す。SLJ 90005シリーズのドライパーティクルは、同等の粒子径を有するパーティクル(類似品1)よりも外観の均一性が高いく、類似品の粒子径が小さいパーティクル(類似品2)よりも白浮きが少ない結果となった。
表3.ソフトフォーカス効果評価結果 | ||||||||||||
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本報では、従来からのシリコーンエラストマーパーティクルの課題であった水への分散性、並びに高価格であることを改善することを目的として、有機系界面活性剤を用いないコンセプトで開発されたエマルジョンSLJ 90005シリーズを紹介した。従来型のシリコーンエラストマーパーティクル(ドライエラストマー/レジンパーティクル、シリコーンエラストマーパーティクル)と比較した各種評価試験では、水への分散性、肌への密着性、極性油の感触改良効果、ソフトフォーカス効果についていずれも優れた特性を示す結果が得られた。
本開発品SLJ 90005シリーズは、従来のシリコーンパーティクルと同等もしくはより優れた感触改良効果とソフトフォーカス効果を有しながら、水分散性が良好であり処方適合性の高いパーティクルである。また、肌への密着性にも優れることから、従来のシリコーンパーティクルが配合されている化粧品での差別化が提案できることはもとより、他の有機系、無機系のパーティクルを使用してきた製品種までの幅広い用途展開が今後期待される。
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